のほほん村通信

のほほん村のあみぐるみと、村長RISAKUの二胡、菜園、モノづくり。
Posted by RISAKU   2 comments

カレーと中野と中島先生

 暑さがひと段落した一日、足を伸ばして中野区立歴史民俗資料館を覗きにいった。

 お目当てはこの展示。無類のカレー好きなので、インドカレーのレシピやスパイスの種類や、本場の作法やメニューや、日本にカレーが入ってきてからの歴史や、ひいてはアーユルヴェーダのことなどなど、見て触って体験して学べるんじゃないかと胸ときめかせて行ったのである。

ポスターからしてそそるではないか!

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 到着してみると、旧家を再利用したという風格ある建物がお出迎え。玄関までのアプローチ脇にはさりげなく防火水槽が置いてあり、水草の間から赤い金魚が見え隠れしている(撮影しようと近寄ったら引っ込んだ)

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 玄関前には木のベンチがあり、脇に「お休み処」と書いてある。夏休みの自由研究帰りか、お母さんと小さな女の子が冊子片手にくつろいでいた。しかも玄関前には大きな藍染めの暖簾。金魚といい、ベンチといい、暖簾といい、公共施設らしからぬ歓待ぶりで、入る前からすっかり気に入ってしまった。

 入り口には受付の人はおらず、児童用の机と椅子が置かれていて、ノートに記帳していくしくみ。写真撮影もOKとある。なんてゆるい資料館なんだ。

 2階が展示フロアになっており、一番大きな展示室には中野区の遺跡出土品から第二次大戦までがものすごい駆け足で紹介されている。決して広くはない空間に中野の歴史をギュッと詰め込んだ学芸員の工夫と苦労がしのばれる。

 でも、実際の民家を再現したコーナーなんか臨場感があって見入ってしまった。ついでに稲生物怪録絵巻を再現したイラストも置いてあったりして、ただの民家園ではありえない発想の組み合わせ(古民家→古道具→夏の展示→妖怪→物の怪→ときたら「稲生物怪録」でしょ!)が愉快である。ってことは、実は学芸員も結構楽しんでたりして。

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時節柄もあって、第二次大戦中の庶民の暮らしが伺えるものは特に胸を打つ。このポスターは、空襲で狙われるのを避けるため一帯を更地にする目的で家屋を供出させたときのものだそうだ。いかに非常事態とはいえ、一生ものの財産である家屋を有無を言わさず供出させられては、さすがにやりきれない気持ちであったろう。

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 さて、肝心の「インド・カレー・中野展」はと言えば、通路の空きスペースでついでに紹介、という風情で、食器や衣装の実物が並んでいるだけ、国際交流祭りのインドブースでももうちょっと'らしい'だろう……と内心ぼやきつつ、レシピ紹介でしばし立ち止まってしまった。

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「2、鶏肉、エビ、タイ、カエルを加えて煮る。」

 鯛はシーフードで許せるとしても、カエル……? いくらカレー好きでもそれは御免被ります。

そしてこちらは元祖中村屋のカリーメニュー。当時は相当な高級料理だった模様。






 さて、インドカレーが意外にあっさりしていたので、もうひとつの展示室も覗くことにする。戦時中に活躍した中野にゆかりのある漫画家の作品展示らしい。8月15日が近くなるとメモリアル的に戦争関連のイベントが各地で開催されるのにはウンザリだけれど(戦争は終っていないという意味で)、まぁ公共施設としては仕方ないんだろうな……とはすに構え、企画展の意図や漫画家の略歴も読まずに適当に流していたら(資料館の人ごめんなさい)、またまた足を止めるものが。

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「山の子供たち」と題したエッセイから「穴内川」という文字が浮かび上がってきた。穴内川、懐かしい川の名前ではないか。よく読むと、本山、吉野川、四国山脈、兼山公園などなど、私の生まれ故郷・高知県本山町にまつわる語句が次々と出てくる。この漫画家、本山を訪問したことがあるらしい。奇遇だなぁ。うん、この切り立った山を縫うようにして走る鉄道風景、今も昔も変わっていない。

その後、エッセイ風の筆描きイラストを見ていたら、「母ちゃんは男女の川に似ちょるきに」「家では土佐弁を話す」との説明が。ここでやっと、くだんの漫画家は高知出身なのだと気づき、今さらながらフリダシに戻って略歴を確認する。

 漫画家の名は中島菊夫といい、高知県香美郡野市村(現・香南市)の出身、少年向け雑誌『少年倶楽部』で漫画「日の丸籏之助」を連載。長く中野区内に住み、終戦前後には、鷺宮国民学校で子どもたちに図画を教えていたという。今年で没後50年になることからこの企画展開催と相成ったようだ。
 
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本人の写真も何点かあった。言われてみればなるほど「高知顔」である。真ん中の写真は、息子に新作を見せて批評をあおいでいる様子だそうだ。

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代表作「日の丸籏之助』。主人公の丸っこい風貌が可愛らしく、同じ高知出身の漫画家・横山隆一(『フクちゃん』)の作風にも通じるものがある。

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でも、多くのスペースを割いて展示されていたのは、漫画作品ではなく、戦時中、疎開した子どもたちのために描いた「慰問新聞」で、鷺宮の様子、創作童話、絵の描き方や紙芝居の作り方などがユーモラスに描かれていて、未来ある子どもたちのために笑いと愉しみを与え続けた彼の思いがひしと伝わってきて、大変な時代だったとはいえ「中島先生」に教わった子どもがちょっぴり羨ましくなった。

タコとタコが墨を噴いてケンカするシーンには私も思わず噴き出してしまった。

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 そんなこんなで、良い意味で予想を裏切られ、満足して館外へ出ると、館の脇に細い通路があり、樹齢500年ともいわれるシイの大木が心地よい木陰をつくっていた。隣接する庭園も年2回、春と秋に公開されるそうで、機会があればまた立ち寄ってみたい。

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企画展『日の丸籏之助の作家 中島菊夫と中野の子どもたち』は2012年9月2日(日)まで開催中(入場無料)






Comment

T.Fujimoto ...
はい、確かにそそる、ポスターが、です。
しかしカエルって、本当でしょうか?
まあ、事実無根で展示するわけはないと思いますが、にわかに信じられないので、調査してみたいと思います。
2012.08.29 21:48 | URL | #hSZuq9uU [edit]
村長 ...
T.Fujimotoさん:
ポスター、つくった時点では気合い入ってたんですね(^^;)

カエルの件は、
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/849074/31
で原本にあたれます。
当時は牛肉や羊肉よりカエルのほうが入手しやすかったのかな?
2012.08.30 10:47 | URL | #- [edit]

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